22年前のことだ。まだ屋根のない西武球場のデーゲーム。生まれて初めて生観戦した日本シリーズで、2塁ベースに向かって頭から突っ込むひとりの選手に衝撃を受けた。後にも先にも、あんな猛烈なヘッドスライディングは見たことがない。広島カープの背番号51。それが、当時20歳の前田智徳だった。って、みんな前田の引退試合を見ながら、フラッシュバックメモリー。
24年間の現役生活を振り返ると同時に、自分の過ごした24年間も思い出す。前田が怪我した年、俺も受験にしくじったなんてさ。子供の頃の野球観戦は花火大会みたいなものだ。インパクトがすべて。試合展開の記憶はないのに、派手なワンプレーは大人になっても覚えている。俺だって、原辰徳のホームランや前田智徳のヘッドスライディングは死ぬまで忘れないよ。今夜は超満員のマツダスタジアムで8回裏に代打で登場して、9回には外野守備にもついた背番号1。好きな選手の引退試合は、卒業式というより好きだったお姉ちゃんの結婚式に似ている。ファンにとって、それは現実を受け入れる儀式だからだ。あれだけ時間と金を注ぎ込んで、青春のすべてを捧げたのに行っちまうのか・・・。マジ悲しい。今夜、何かが決定的に終わったけど、人生は続いていく。さあ、胴上げでもして、思いっきり飲もうぜってさ。今後しばらく、こういう完璧な引退試合はないだろうね。ドラフト下位指名で入団した高卒選手が、24年間ひとつの球団に在籍し続け2000本安打を達成する。前田もアキレス腱の怪我さえなければ、日本人野手初のメジャーリーガーになっていたかもしれない。仮に今、前田のように十代でレギュラーを掴む天才がいたら、20代後半にはアメリカ行き濃厚。もう、ひとつのチームでストーリーが完結することは難しくなった。生え抜き選手の20数年間の始まりから終わりまでを、多くのファンが球場で共有する。ラストスイングの試合後、真っ赤に染まった場内を一周し、無数の花束を受け取る前田。正直、テレビの前で広島ファンに嫉妬した。いいよなぁ。俺らは、松井秀喜の全盛期を目の前で見れなかった。
15年後、マエケンや坂本勇人の引退試合はどこで行われるのだろう?
See you baseball freak・・・
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